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大阪高等裁判所 平成10年(行コ)10号 判決 2000年3月22日

控訴人

木村薫

右訴訟代理人弁護士

分銅一臣

被控訴人

加古川税務署長 平野栄作

右指定代理人

高橋伸幸

山本弘

新名徹

宮田恭裕

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一当事者の求める裁判

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人は昭和五七年五月一七日付でした昭和五二年分所得税の更正処分のうち、総所得金額を二四九八万一二一三円として計算した額を超える部分並びにこれに伴う過少申告加算税及び重加算税の賦課決定処分を取り消す。

3  被控訴人が昭和五七年五月一七日付でした昭和五三年分所得税の更正処分並びにこれに伴う過少申告加算税及び重加算税の賦課決定処分を取り消す。

4  訴訟費用は第一、二審を通じて被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文同旨

第二事案の概要

事案の概要は、次のように付加訂正するほかは、原判決の事実及び理由第二記載のとおりであるから、これを引用する。

一  原判決五頁一一行目冒頭の「月三日付け」を「月一三日付け」と改める。

二  同八頁六行目冒頭から九頁七行目末尾までを次のように改める。

「フジの代表者は児玉俊夫(以下「児玉」という。)であるが、フジの資金繰りは、昭和五二年二月頃から昭和五三年末頃までは、昭和五二年二月頃にフジと事実上合併したフジ建装株式会社(以下「フジ建装」という。)の代表者であった堤正策(以下「堤」という。)が行っていた。フジの資金繰りは、昭和五二年までは銀行借入れによっており、フジ建装の負債を肩代わりして経営状態が悪化してからは、児玉の姉である久保知恵や伏見はつ子、楢木敏雄(以下「楢木」という。)が経営していた株式会社明豊社(以下「明豊社」という。)などからの借入れで賄っており、控訴人からの借り入れは昭和五三年一一月四日の五億円の借入れが最初であって、それ以前に借入れがあったとの被控訴人の主張は誤りである。」

三  同一一頁一行目末尾に続いて次のとおり付加する。

「また、明豊社の前記取引は、聖和女子大学側から寄付金の要請があり、これに応じた結果、明豊社若しくは楢木には殆ど利益が生じていないから、利益分配金などが生じることはなく、明豊社が控訴人に支払った金員が借入金の返済であることは明らかである。」

四  同頁一〇行目冒頭から同一二頁五行目末尾までを次のように改める。

「控訴人は、井上が持込んだ川崎組振出の約束手形一〇通(額面合計五〇〇〇万円)を現金二九〇〇万円、残額二一〇〇万円は旧債務に充当する形で割り引いた。その後、控訴人は川崎組から同手形が他の一〇通と共に詐取されたものであることを聞き、その回収を依頼された。そこで控訴人が井上に回収を指示したところ、井上がどこからか残余の手形一〇通を回収してきたので、右手形二〇通を川崎組に交付し、割引金として控訴人が負担した五〇〇〇万円について川崎組から同額の約束手形を受領したものである。したがって、回収の報酬として受け取ったのは二〇〇万円のみであり、前記のように控訴人が多額の現金を出捐していることからも、控訴人が同手形をパクリ手形と認識していたことはあり得ない。」

五  同一三頁五行目の末尾に続いて次のとおり付加する。

「控訴人が経費を一〇〇〇万円と述べたことがあるが、これは手形所持人に支払った金員を除く回収に当たった井上らに対する報酬や交通費を述べたものであって、他の者が所持している手形を回収するのに手形所持人にある程度の金員を支払う必要があることは当然である。」

六  同一四頁末行目の「本件賦課処分」を「本件賦課決定」と改める。

第三当裁判所の判断

一  当裁判所も昭和五三年分所得税に関する本件課税処分のうち確定申告額を超えない部分の取消しを求める部分は不適法で却下すべきであり、その余の課税処分の取消請求は理由がないから棄却すべきものと判断するが、その理由は次のとおり付加訂正するほかは、原判決の事実及び理由第三記載のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決二三頁六行目の末尾に次のとおり付加する。

「控訴人は、原判決別表4―(2)のうち、<3>ないし<5>、ないし<16>ないし<18>について、一か月未満の分について日割計算がされていないこと、日割計算がされている<9>ないし<15>について通常は一か月を三〇日とする日割計算なのに三一日とする日割計算と合致することから、月五パーセントとの認定は誤っている旨主張するが、前段については、一か月未満の分を一か月と計算している分も含まれるから単に計算の便宜上のものと認められ、後段については、できるだけ多額の利子を取ろうとしている金融業者としては比較的少数かも知れないが、このことから前記認定が誤っているといえるわけではない。」

2  同二四頁三行目の「原告は、」の次に「原審において」を付加し、同五行目の末尾に続いて次のとおり付加する。

「なお、当審においては、控訴人は控訴人からの借入れは昭和五三年一一月が最初である旨主張しているが、基本的な差異はない。」

3  同二五頁二行目の末尾に続いて次のとおり付加する。

「控訴人は、嶋岡が建設部長であって、金銭にかかわりのない仕事をしていたものであるから、同人の供述(乙二四及び二五記載のもの)は信用性が乏しい旨主張するが、経理関係の業務を行っていたのは前田であって、嶋岡はフジの建設部長という立場にあり、直接資金繰りにかかわっていたものではないと認められるけれども、同人はフジの常務取締役という役職に就いていたのであり、フジの倒産後、控訴人や児玉から事情を聞いて、前記のように判断したという同人の供述(乙二五)は十分信用し得る。」

4  同頁三行目、同三〇頁五行目、同三三頁七行目の「益金」を「事業所得の金額の計算に当たり収入金額」とそれぞれ改める。

5  同三〇頁三行目の末尾に行を変えて次のとおり付加する。

「 楢木は同人作成の陳述書(甲34)において、明豊社が加古川の開発の件で控訴人から多額の借入があったことは間違いがなく、これについて、当初は返済していなかったけれども、聖和女子大学の件で新たに借入れをする際の約定で、昭和五三年一二月二九日に控訴人に二口合計四九五〇万円を支払ったもので、このうち一九五〇万円は従前の貸付金の返済であり、三〇〇〇万円は聖和女子大学の件での借入金の返済であり、更に聖和女子大学の件は、一部当初の契約内容に変更があったため、ペナルティとして大学に四〇〇〇万円の寄付をせざるを得なくなり、利益は上がっていないという、おおむね控訴人の主張に沿う陳述をしている。しかし、右陳述記載も客観的裏付けを欠くから、前記認定を左右するには足りない。」

6  同三二頁末行目の「前項掲記」の前に、「証言や供述の内容が、従前の取引からいってもかなり問題のある手形を額面金額と同額に近い額で割り引いたなどという著しく不合理なものであって、」を付加する。

7  同三三頁一一行目及び同三七頁一〇行目の「損金に」を「事業所得の金額の計算に当たり必要経費として」と改める。

8  同三五頁四行目の「存在しない。」の次に、次のとおり付加する。

「たしかに、一般的には他に回った手形を回収するためには、所持者に対し、なにがしかの対価を支払う必要がある可能性が高いが、前記のように、パクリ手形と知りながら割り引くなど、控訴人と井上がかなり親密な関係であったと考えられることからすれば、控訴人は特に出捐せず、井上の責任で回収させたこともあり得るから、裏付けのない支出を認めるのは相当ではない。」

9  同添付別表3―(2)「被告の最終主張額」欄のうち、収入金額の合計欄「246,398,898」を「246,393,898」と改める。

二  以上の次第で、原判決は相当であって、本件控訴は理由がないから主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 井筒宏成 裁判官 古川正孝 裁判官 富川照雄)

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